QPON生産管理トヨタ生産方式・かんばん方式
はじめて文書になった「かんばん方式」

トヨタ自動車の50年史は「かんばん方式」の発祥を次のように記述している。
昭和29年春、業界紙にアメリカのロッキード社でジェット機の組み付けに スーパーマーケット方式を採用し、1年間に25万ドルを節約したという記事がのった。
何の変哲もない小さな記事であったが、これを目に付けた人がいた。
豊田喜一郎のジャスト、イン、タイムの思想を機械工場で実践し、部分的ではあったが 、計画的な流れ生産を可能とした大野耐一であった。(以下省略)

以降トヨタの生産体制は、スーパーマーケット方式が徹底され、その運用の道具として 「かんばん」が使われたことにより「かんばん方式」と呼ばれるようにりました。
しかし、10年以上経過した、昭和40年代に入っても、「かんばん方式」について 書かれた文書はありませんでした。

はじめて文書化されたのは、 工務部の各工程担当が、自分の担当現場の生産の仕組みを事例にまとめる、というものでした。
私もその一員として参加し「事例1」〜「事例3」を担当し記述ました。
今では、多くの出版物が発刊され、学問としても確立している「かんばん方式」ですが、 昭和45年3月に発行された、「かんばん事例集」と比較して現状を反省してみるのも有意義ではないかと思い、ここに紹介します。

リーダー的な立場で編集に携わった方から, 以下のような, さらに、詳しい経緯の寄稿をただきました。


「かんばん事例集」の生い立ちとその後

昭和29年、トヨタ自動車工業(株)の本社機械工場に生産管理の手法として導入された 「スーパーマーケット方式」は、昭和38年に「かんばん方式」へと発展し、その後も進 化しつづけた。

昭和40年11月、TQC(総合的品質管理)の推進により デミング賞実施賞 を受賞 したのを機会に、「かんばん方式」についても、その手法をまとめる必要があるのでは、 という気運があった。

翌、昭和41年10月に 日野自動車工業(株) と業務提携が結ばれ、間もなく管理職の 方々が本社機械工場へ作業実習(延べ約400人)に来られた。作業実習修了時、当時の 大野耐一本社工場長(トヨタ生産方式の生みの親)との懇談会がもたれ、工場長から長年 の間本社工場で培われてきた「ものづくり」の考え方、その手法等が語られた。

これを機会に、数十回実施された懇談会の内容から基本的なことを、本社工場における かんばん方式 の「概要」として整理し、各製造工場で実施されている具体例を「事例集」 として集録し、昭和45年3月にまとめ上げたのが「かんばん事例集」である。
それまで「かんばん方式」について文章化されたものがなく、ここでまとめたものが最初 であった。

昭和45年11月、第1回 日本品質管理賞 受賞時の 本社工場実情説明書 には、生産管 理方式の「特長」として「かんばん方式」が記述された。

その後、「かんばん方式」についてはトヨタ技術会報やトヨタマネイジメント誌 に寄稿され、昭和46年6月には、生産管理部が「企業とかんばん」を上 梓した。

「かんばん事例集」は、昭和47年ごろから 教育部 が社内教育である 班長特別教育 の 教材として活用し、さらに 昭和48年1月 「トヨタ式生産システム----基本編」、昭和5 2年9月「トヨタ式生産システム----応用編」として、更に進化している「かんばん方式」 をまとめ、社内外での活用に供した。

その後、社外での活用が進むにつれて「トヨタ式・・・」は、「トヨタ生産システム」に 改められた。

(文責 尾池 正一)


本社工場における
かんばん方式概要
昭和45年3月1日
トヨタ自動車工業(株)
本社工場 工務部

まえがき
当社は佐吉翁の自働織機発明以来、自働化についての伝統的な精神が受け継がれてい る。
この自働化の精神は、不良品は絶対に後工程へ流さないということに基づくものであ り、佐吉翁の自働織機では、たとえ1本の糸が切れてもその織機は自働的に作業を停 止し、糸が切れたままでは動かなくなっている。
いうならば織機に自働停止装置が付いていて、糸が切れれば、そのとき、その場で 処置ができ良品だけを生産できるようになっている。
不良品をいくら作ったところで材料の浪費であって、仕事をしたこと 働いたこと にはならない。
即ち働くということは、不良品を造らないことであり、自働停止装置が付いている ことが自働化である。

これに対して単なる自動化では自動に切替えることによって性能向上分だけ生産性 は向上するが、たとえ規格外の品物ができても機械は動きつづける。
この自働化の考え方を生産活動の面に応用したのがスーパーマーケット方式と呼ばれ るものである。
これはスーパーマーケット(前工程)が顧客(後工程)にとって、必要とする品物を、 必要なときに必要な数量だけ入手できるマーケットであり、顧客はストックとなるよ うなものは無理に購入しなくとも(在庫としなくとも)よく、またスーパーマーケッ トも顧客が望むものを揃えておけばよい、という考えに基づいたものである。

そして、 この考え方を各工程ごとにつぎつぎと繰返すことにより材料取りから総組立工程に至 る一連の作業を少しも停滞させることなく、全体として循環的流れ作業が形成できる のである。
このスーパーマーケット方式の考え方をさらにすすめ工程管理の改善を目 指したものが「かんばん方式」である。

従来在庫管理の面では発注時点における在庫量がつかめていなかった。
例えば、翌月の生産量が決まるのは当月の中旬であり、その時点では月末の在庫量は 不祥であり、たとえ月末に棚卸しをして在庫量を把握できたとしても、その時には既 に発注を終えた後であるから調整ができない。
また不良品が発生した場合、その補充が迅速に行われていなかった生産活動における 在庫管理は全てのことが計画通り行われたときだけはうまくいくのであって、実際に 計画が計画通り実行されることはほとんどありえない。
そのため在庫過多のものが生 じるしその反面欠品も起りうる。
このような欠陥を無くするために案出されたのがかんばん方式である。

従来の在庫管理を計画にもとずく発注方式とすればかんばん方式は発注時点に在庫量が 把握され計画の変更にも、不良品が発生した場合にも迅速に対応でき適正な処置、 調整等がその都度行いうる実績に基づく発注方式といえる。
この方式では、多すぎるものがないかわりに欠品も起らない。
本来、在庫量の微調整を目的としているこの方式では、非常に大きい変動を起すこと は最も戒むべきである。

昭和38年以降採用されたかんばん方式は本社工場において逐次ケース バイ ケース で実施に移され、現在では全面的採用となり、作業量の平均化、在庫量の削減ばかり でなく設備・機械の自働化、製造方法の合理化、適正な人員配置などにも大きい効果 をあげてきた。

かんばん方式は固定したものではなく、今後時代とともに生産システムの進展にとも ない更に改善、充実され、すぐれた生産量管理方式として発展していくと思われる。
しかしながら、それを運用する人はいつまでも同じ人ではない。
つまり今後かんばん 方式を運用する人によって解釈が異なったり誤った方向に進んでいく可能性がある。
また、新しくかんばん方式に携わる人には、かんばん方式というものを早く理解させ る必要性とこれから かんばん方式を実施する場合の参考といった点などから、今日ま でに実施された本社工場に関連のある事例を系統的に集録し、併せてかんばん方式を 実施するための基本事項を一応整理したみた。

1.かんばん方式の原則
後工程が前工程へ必要なものを、必要な時に、必要なだけ取りに行き、 前工程は必要最小限の在庫でこれに応じなればならない。
かんばん方式は、現物管理を中心にした生産活動における同調化管理方式であり、通 常の運搬工程を逆にした考え方に基づくものである。
即ち顧客(後工程)がお金(かんばん)をもって、いわゆるスーパーマーケット(前 工程)へ、欲しいもの(必要な部品)を欲しい時(必要な時)に欲しいだけ(必要な 数量)買いに(取りに)行くと考えればよい。
実際に何が、何時、どけだけ欲しいかは顧客(後工程)が最もよく知っているはずで あり、後工程は必要とするもの以外は引き取らないので後工程にはストックとなるよ うな余分な在庫はなくなる。
前工程は、後工程があるインターバルで取りにくるので、それまでに必要最少限度の 所定の数量だけ(かんばんによる生産指示分だけ)生産して、所定の置場所に確保し ておけばよいのであって必要以上のものは生産しないようにしなければならない。

2.かんばん方式を実施するための必要事項
かんばん方式はサイクルを持ったものである。
このサイクルとは後工程が前工程へ品物を取りに行くことにより生産時 期、生産量、品質等の情報が自働的に前工程に連絡され前工程はこの情 報によって次のものを準備し品物は後工程へ流れるという。
この繰返しをいうのである。
このサイクルが各工程を結び、鎖状に連携し合い生産を同調化し種々な 規制を行っている。

この方式のより良い運営のためには下記事項に留意する必要がある。

2−1 生産の継続性
かんばん方式により生産されるものはある程度継続して生産されるものでなけれ ばならない。
例えば1個1回だけの個別注文生産の場合は継続性がないのでサイクルが成立し ない。

2−2 生産の平均化
工場における各工程での生産は、前後工程の特性に応じ、その工程の能力によっ てできるだけ平均化することが望ましい。特に最終工程での生産量の平均化は重 要である。
この最終工程での生産の平均化では、1日当りの平均化のみならず、1日分の時 間当りの平均化をはかることが必要である。
最終工程の必要数量に波があると、その前工程に対しては負荷の増減となって現 われ前工程にさかのぼるにつれて、その波を大きく被り各工程を混乱させ、在庫 量に過不足をきたし、目標とする生産計画の達成が不可能になることもありうる。

2−3作業工程の合理化・安定化
生産能率の向上はムリ・ムラ・ムダをなくすことにあるが、かんばん方式を実施 する際には、まず作業工程が合理化され、安定化していることが望ましい。
そのためには、設備・機械の自働化の工夫をし、機械故障コンベアラインの故障 など突発事故に対する予防保全の体制ができていること が望ましい。

2−4品質の安定
「品質を工程でつくり込む」ためには、作業部署では自工程の工程能力を常に把 握し、後工程に対して品質が保証された製品を生産しなければならいない。
自工程での生産が安定していて、初めて出荷可能な品物であって、いくら加工 が完了していても、また所定の数量が確保してあっても品質が保証されていな ければ所定の在庫とはいえない。
もし、不良品を後工程に送った場合には、その情報はすぐ前工程へフィード バックされ、前工程の管理、監督者はバカヨケなどの対策を考え、再発防止に つとめなければならない。

3.かんばん方式運営の一般的に方法(約束事項)
かんばん方式を円滑に運営していくためには種々な規制が必要であり、 かんばん方式の運営に携わる人は決められた運営のルールを守らねばな らない。
かんばん方式でいうかんばんとは、何回も使用することのできる指示書 である。
即ち、生産指示書、出庫指示書、運搬(引取)指示書、注文書、 納入指示書などの内容を1枚のかんばんに表示することによって、帳票 や伝票を必要とせず、事務を簡素化し、人員も必要とせず自働的にこれ らの調整をはたすことを目的とした諸情報伝達のために有機的な働きを する媒体である。

かんばん方式運営のための一般的な約束事項としては次のものがある。
3−1、かんばんの種類と基本的な記載事項
A)流れ作業の場合
この様式は機械加工部品熱処理部品、組立部品などや応用例 として購入部品に利用している。


(注)運用の仕方については事例集7参照のこと
D)少量生産の場合
少量ではあるが毎月あるいは毎日継続して生産される 部品については次のことを考慮してかんばんの様式を決める。
流れ加工部品
(1)必要なもの、必要な量だけ生産するという原則に従って、 1箱の収容数を必要数量に合わせて小さくし、多量生産する 部品のかんばん様式を利用する。
ロット加工部品
(2)信号かんばんの考え方を利用し、手配に必要なリードタイ ム分だけの在庫になったら次のものを決められた数量だけ生 産する。
この場合のかんばん様式も多量生産する部品の様式 を利用するが、下限在庫量を決めておく必要がある。

3−2かんばん枚数の決め方(仕掛数量の規制)
3−3部品およびかんばんの置場所の指定
(1) 部品の置場所(所番地)を明確にする。
※該当部品はそれ以外のところには絶対置かない。
※後工程・前工程とも所定の置場所を決めるときには、 運搬の便利さ、あるいは品質保持ができることを考慮する。
※ 該当部品のかんばんにも後工程・前工程の所番地を明記する。
(2) かんばんポストを所定の位置に設置する。
※ 後工程は部品を使用するときに抜いたかんばんを入れる かんばんポストを作業員の手近かな所定の位置に設置する。
※ 前工程は後工程が品物を取りに来て空いたかんばんを入れ る かんばんポストを設置する。 ※ 前工程は、後工程が部品を引き取りに来て、該当部品が無い 時に、つまりその部品が得急状態になっていることを知るた めに得急品用かんばんポスト(赤ポスト)をも設置する。
3−4 かんばんの取扱い方
(1)後工程では
※ 流れ加工部品では、一般に部品を使用するとき 最初の1個を取り出したとき、かんばんを抜き所定の かんばんポストに入れる。(図1)
A)通常の場合
※ ロット加工部品(プレス品・鍛造品)など信号かんばんを使用す る部門では、在庫ストアから逐次引き取ってかんばんがかかって いる箱に手がついたらそのかんばんを前工程行きのかんばんポ ス トへ持って行く。(図2)

(2) 運搬工程では
※ 後工程は、かんばんと空箱を持って前工程へ品物を取り行き、 前工程の完成品の置場所で完成品に添付されている前工程の か んばんを前工程のかんばんポストに入れ、自工程から持って 来たかんばんを現品に添付する。
※ 後工程が前工程から引き取るときは現品とかんばんとを必ず セットで、かんばんの指定する運搬単位で引き取りかんばん に 指定された置場所におく。

(3) 前工程では
※ 前工程はかんばんポストに入れられたかんばん枚数分だけの 現 品を生産し、それ以上は生産してはいけない。1箱分が完成し ら、かんばんポストからかんばんを取出し必ず1箱毎に1枚づ つ添付する。
B)異常の場合
(1) 特急品の処置(赤ポストの役割)
※ 後工程が前工程に品物を取りに行ったときに現品がない場合 には、前工程にある所定の特急品用かんばんポスト(赤ポスト) へかんばんを入れ、前工程に対し該当部品を最優先で仕掛る ように指示する。
(2) かんばんの紛失の処置
※ “かんばん”はかんばん方式を運用していく上で最も重要なも のである。
かんばんの紛失は生産活動を停止させるばかりではなく目 標 とする生産達成させ不可能にすることがありうる。
もし、か ん ばんが紛失していることが発見されたならば、その責任部署 を明確にし、その部署に対して紛失の再発防止対策を採らせ た上で、紛失分のかんばんを再発行する。
3−5かんばんの役割
かんばんはある生産工程の量の変動に対して関連する他工程の生産 量をも自律神経的な働きでコントロールしようとするものである か ら、各工程間にかんばん方式を採用することより全体として生産量 の同調化をはかることができる。
かんばんのもつ基本的な役割とし ては次のものがある。
(1) 仕掛についての指示
※ 仕掛の数量・時期・方法(例 焼入温度、サイクルなど)
※ 仕掛の順序・種類(例 流れ加工か、ロット加工か)
(2) 作業状況についての情報提供
※ 後工程の作業の進捗度
※ 仕掛の標準作業の遵守状況
※ 自工程の能力把握
※ 自工程の在庫状況
※ 人員配置の適正度

(3) 運搬についての指示
※ 運搬数量・時期
※ 運搬工程・置場所
※ 運搬具・容器
(4) 異常事態についての情報提供
※ 後工程が必要とする緊急度
※ 仕掛の優先順位
3−6 かんばん方式による目で見る管理
かんばん方式は管理監督者が部下からの報告や紙に書かれた 資料によることなく生産の実態を一目瞭然、目で見て管理できる ようにしたもので“かんばん”の言葉の由来もここからきている。
目で見る管理の要点は次の通りである。
(1) 標準作業の定着について
作業がかんばんその他の作業標準が示す標準 通り行われているかをたえずチェックして標準通りの 作業が行われるようにする。
(2) ラインストップの対策について
作業者は標準作業ができないときは、ラインを止め 管理・監督者はラインを止められないように処置をとる
(3) 生産工程の改善について
管理・監督者は生産の実態を目で見ることによってムダを 見つけ常に改善を心掛けねばならない。
特に前記ラインストップは生産工程での問題点を顕在化したも のであるので改善のために100%利用しなければならない。
(注)作業者がラインを止める場合
1. 工程の中で不良が発生したとき。
2. 標準作業が守れないとき。
3. かんばんだけ生産完了したとき
4. 前工程の品質不良を見つけたとき。
5. 欠品するとき。

4.かんばん方式と運搬



5.かんばん方式による同調化
各工程間にかんばん方式を採用すれば、各工程は、最終工程である。
総組立工場に同調化したエンドレスチェインで結ばれる。


事例集
この事例集は、本社工場でケースバイケースで実施されてきた。
かんばん方式のありのままをまとめたものであるので改善を要するところ が随所に見られる。今後これらの箇所を逐次改善し、より充実したかんばん方式 にするために努力して行く所存である。
もし、これら事例集を参考にしてかんばん方式を採用されるときには、この事例集は 完成された姿のかんばん方式について記したものでない、ということを十分に理解し ていただき、実施する部署に応じた方式を研究されるこてを望みたい。




<事例1>
組立て及び組付けライン

1.生産計画の平均化

生産計画は、お客様の注文に早く応じられることと、生産が平均化していることの両者が満足したものでなければならない。
この両者の満足するためには、お客さまの要望を早く計画に組入れ漸増、漸減していく生産計画を作成していくようにする。
お客様の注文は、一時期に集中してあるものではなく漸増あるいは 漸減の傾向であるから、けっして生産の平均化の考えと矛盾するものではない。
ここでいう平均化は、車種別にとっても、車型別にとってもユニットの種類別にとってもあるいは時間当たりでも、日当りでも月当たりでも平均化しているようにすることを理想としている。
又、生産の遅れが発生した場合は、配車計画の許す限りならし、平均化して挽回するようにしている。


a 日程計画

旬間計画により10日単位で与えられた車型別の生産台数を、車種ごとでも、車型ごとでも、ユニットの種類ごとでも、特殊な仕様ごとでも、毎日の生産台数がてきる限り均等になるように作成する。
(但し、生産単位は大型3台、小型5台ですので、その倍数単位でおこなう) 又、毎日生産するだけの台数がない車型や仕様の車は、一定の間隔をおいて生産するようにする、この条件はよく見落されがちであるが、平均化のためには重要な条件である。

平均化の順序
イ 組立工場のライン別台数の平均化
2本ある組立てラインが、前工程から平均して引取るよう2つのラインの 1日当りの生産台数を同じにする
ロ 車名別の平均化
ライン別に平均化されると、その枠の中で、車名別に平均化される、この時、 平均化の順序は台数の少ないものから順番におこなわれる
ハ 車種別の平均化
車名別に平均化されると、その枠の中で車種別に平均化される。その時も 台数の少ないものから順番におこなわれる。
ニ 車型別の平均化と機能別平均化
車種別に平均化されると、その枠の中に各車型を平均に割付けていく。 この割付は、各車型が属する機能の優先順序の高いた車型で台数の少ない 車型から順番に行われる。

主な機能

注意:車名別や種別の平均化の結果が、機能別の平均化にもなっているような 車型は、機能を考慮せずに割付が行われる。
以上の平均化は電算機を用いた「日程計画作成システム」で行われている。
又、平均化の条件は現状のものを掲げたが、また充分とはいえないので、 今後も平均化条件の整備につとめていく。

b 組立順序計画

日程計画で与えられた、第1ラインと第2ラインの1日の台数を車型ごとにロット単位に(大型3台、小型5台)に細分し、車型別にロットごとの組立間隔が均等になるように配分する。 又、混合ラインであるので、可能な限り各車型毎に均等化された間隔を くずさないように組合わせて順序を作り、組立てNOを付与する。
イ 車名別に平均化する
ライン別に1日に組まれる総ロット数分の枠をつくり、車名別に間隔が均等 になるよう枠取りがされる。

ロ KD(輸出の現地組立方式車両)を平均化する
社名別に枠取されたら、その車名の内のKD分を等間隔に取る

ハ 車名別に平均化する
組立分とKD分の枠が決まったら、組立分とKD分のそれぞれの枠に車種 を等間隔に割付けていく

ニ 機能別に平均化する
車種別に枠が決まったら、その枠に機能が 等間隔なるように割付られる

ホ 車型別に平均化する
以上により作られた枠に個々の車型を平均的に割りあてていく、この時台数の少 ない車型から順番におこなわれる。

以上の平均化は電算機による※COSMICシステムを用いて行われる。
又、平均化条件は現状のものをあげたが、まだ充分とはいえないので、今後も平均化条件の整備に努めていく
※COSMICとはConveryer scheduling & Mamagement Information Control Systemの略で、組立順序から配車までを電算化した時に 命名したトヨタ用語である。

以上のシステムで下図のように作成される


C 組付順序計画

この計画はエンジン、ミッション、アフスル、フロペラ、ハンドル、フレーム の各ユニットを組付ける順序として使われている。
これらのユニットは本社工場の第1組立ライン及び第2組立ラインから引取られるほか、元町工場やCKD工場やボデー袈装メーカーにも供給し、パーツも生産している。
この順序は各工程の引取る順序を、引取られる時間の早いものから順番に編成したものである。



(イ) 組合せの方法
・本社組立の第1ラインと第2ラインの消費速度の早いものから組み合わせる
・次にユニット支給分を等間隔に挿入する

(ロ) 後工程と生産能力が異なる時の組合せ方法
例1 アフスル、プロペラ、ハンドル
この工場は、組立工場(後工程)が1直生産に対して能力の関係から、 現在2直生産をしている
このため、ユニット支給分の生産を組立分の生産後に行うようにしている。

・ユニット支給分を組立分の後ろへ、車型別に等間隔に入れる

例2−F型エンジン
この工場は、現在昼夜2直で生産しているが、組立分及び、ユニット支給分を 間隔に組合わせた原則通りの順序に組合わせている。
この場合、組み立て工場との能力の差は1/2日分の在庫を持つことにより解決 している。

(ハ) ユニット支給分の生産が主になっている所の組合せ方法
例1 R型エンジン
この工場は全生産の25%を本社の組立へ供給し、残り75%は元町工場、関東 自動車、トヨタ車体へ供給しており、又勤務形態も昼夜2交替で生産している ので、他の工場とは組合わせ方法が異なっている。

・1日の総必要台数を計算し、1/5してロット数を出す
・ロット数だけのエンジン用組付NOを書く
・本社組立向のエンジンを作る時点を決定する(RU用エンジン)
本社組立の始業時の1.5H前から終業時の1.5H前までにラインオフする ようにし、その範囲内で 間隔にとる
・第2ラインの組立順序表より順序に従って車種を入れていく。
・元町工場のRS及びRTのボデー着工順序より 当日の引取を算出する
・朝、現在のエンジンストアの在庫を調べて当日の生産数を決定する
・ 本社工場向けの後に元町工場向のRS用のエンジンをボデー着工順序に 従って 間隔に入れる
・ 元町向の間に関東自動車向けのRS用エンジンとパーツ用エンジンを 等間隔に入れる
・ 以上で5Rエンジンの割付が完了したら、次に元町向RT43用を空いてい る所へボデー着工順序に従って、 等間隔に割付ける
・残った所へトヨタ車体向けを割付けて完了する。
d 先行、挽回、増産、減産等の計画変更

計画の変更は、販売よりの要請に早く応じられ、かつ、平均生産ができるように できるだけ早い時点からおこない、日当たりの負担に大きな差が出ないようにする。
翌月から大幅に増えるような場合は、当月に先行して、ならし生産をする。
また、生産が遅れた場合の挽回計画は、配車計画の許す範囲で、できるだけ平均かして挽回する。

イ、先行計画
1)翌月の内示台数による検討
前月の10日に発行される内示にもとづき、当月の日当たり台数と翌月の日当たり台数を計算し、先行の必要性の要、不要を決定する。

2)翌月の確定台数による検討
前月15日に発行される確定計画に基づき1)と同様の検討

3)モデル切替計画にもとづく検討
計画が発表される都度、ライン改造期間分の必要台数分先行生産するが、できるだけ日当たり負荷の増加を少なくするよう長期にわたる計画を組む。

ロ、挽回計画
挽回は原則として挽回の可能になった日から月末までを掛け、ならしておこなう。

ハ、増産、減産計画
挽回と同様ならし生産をする。


2、生産計画に対するラインの稼動計画
翌月の生産計画や、翌旬の日程計画にもとづき、各組立てライン、各組付けラインごとの、車型別生産必要台数を各工場へ示す。
各工場は、この台数を生産するために、必要となる諸対策を講じて、実行に入る時点には、体制が整えられている。


3、車両組立、ユニット組付けへの生産指示
各ラインへの生産指示は、指令室(コントロール室)がおこなう。
指令室の指示は、工場長命令として、各ラインでは取扱われる。
したがって、指示に反する生産は一切許されない。
また指令室から、最終ラインの車両組立てラインへが、生産順序と生産量が 前工程のユニット組付けラインへは生産順序のみが指示される。
指示は1ロットづつ直前に出すのは、余分なものを作らせないためと指示の変更をなくするためである。
伝達方法は、生産に必要なすべての項目を記入したインターライターでおこなわれている。
a、車両組立への指示
組立て順序表にしたがって1ロット(大型は3台分、小型は5台分)づつインターライターを用いて指示する。
(インターライターとは、写真電送に似た通信機器で、紙テープ上に鉛筆で記入した文字が電気的に送信され、複数の受信機の紙テープ上に放電により文字が再現される装置)

(イ)指示の内容
車型をはじめ特殊な輸出車の仕様に至るまで生産に必要なすべての項目が記入されている。


(ロ)指示先
.
ミッションライン

R型エンジンライン

F型エンジンライン

プロペラライン

ステアリングライン

大型アクスルライン

小型アクスルライン

フレーム塗装ライン

エンジン×ミッションライン

部品トロリーコンベアー
フレーム引取り
タイヤ引取り
第2総組立てライン


部品トロリーコンベアー
フレーム引取り
ラジエータ組付け
タイヤ引取り
第1総組立てライン


指令室
△=1ライン用
○=2ライン用

(ハ)指示タイミング
車両組立ラインへアップされる15ロット前 (約2.5時間前)
これはリードタイムの一番長いところを基準に定められている。
トロリーコンベアー部品積み込み(10ロット前)+準備作業+α=15ロット
この指示は組立てラインへは生産指示、前工程にはユニットの運搬台車への積み込み指示として使われる。

(ニ)組立て終了指示
毎日、各ライン毎に1日の終了のインターライターNOを知らせる。
この指示は計画に対して±5台以内とし指令室の状況判断で決定される。
伝達方法は、インターライターの指示を四角で囲って知らせる。

b 組付への指示
組付順序表に従って1ロット(大型3台、小型5台)づつ インターライターを用いて指示する。

イ 指示の内容
組立ての場合と同様、組付けに必要なすべての項目を記入する
なお、インターNOは後工程別に文字を分けている


(ロ)指示先
.
ミッションライン
R型エンジンライン
F型エンジンライン
プロペラライン
ステアリングライン
大型アクスルライン
小型アクスルライン
大型フレームライン
小型フレームライン
FJフレームライン
ダイナフレームライン

指令室
□ミッション、フレーム用
△=アクスル・プロペラ用
○=エンジン用


ハ 指示のタイミング

組立工場のラインアップに対し 40ロット前
約 6 時 間 前

これはリードタイムの1番長い所を基準に定められている
大型アクスル工場のブレーキ引取
台車上(10ロット)+塗装ライン(3ロット)+組付ライン(2ロット)
+ブレーキの引取(20ロット)+ アルファ = 40ロット


C 仕入れ先への指示
仕入れ先からの部品の納入は、かんばん方式で行こなっているが、1部の アッセンブリー部品は、自工の組付ライン同様の順序に従った納入がされて いる
その理由は、物が大きく種類が多いため、各種類ごとに置場を設けて 使われただけ補充する。というかんばん方式だと、置場面積が非常に大きく なるためである。順序に従った納入をしている仕入先は次の所がある
メーカー部品
*トヨタ車体全車のキャブ・デッキ
*豊田自動織機3P・2J・H・Dエンジン
アイシン精機大型・FJ・ダイナ(フルシンクロ)ミッション、
豊性ブレーキ全車のブレーキ
中央精機全車のタイヤ
トピー工業スタウト・大型トラック用タイヤ


イ 指示の方法
インターライター又は組立順序表による

ロ 指示のタイミング
インター・ライターによる所は自工の組付ラインと同じ組立順序表による所は3日前(5日分づつ)
組立順序表による納入は3日前に5日単位で納入順序が固定してしまう欠点があるので、
かんばん方式か、インターライターによる方式に変えていくよう検討中である。(上図の※印のみ)


4、車両組立ラインの稼動と部品の引取り
組立ラインは前記した指令室からの指示に従って前工程から、ユニットや部品を引取り、 又トロリーコンベアーや、ラインサイドから部品を供給して、ラインを可動させる ユニットや部品の引取及びトロリーやラインサイトからの部品の供給については事例2で詳しく説明する。 又ユニットの組付ラインの可動方法についても 事例3で説明する
イ ラインタクトの決定
一日当たりの生産台数から、ラインタクトが決められるラインタクトは、 ラインストップがなければ5〜10分早く1日の計画が達成するように決めら れる(これを調整時間と呼んでいる)
ロ ユニットの引取と補充
組立ライン(後工程)は指令室の指示した順序に従って1ロットづつ 前工程から引取って来る 前工程の組付けラインは引取られただけ指令室の指示した順序に従って ユニットを生産し補充しておく この引取と補充は直接継くのではなく、一定量の台車(在庫)をもって行われ る
ハ 部品の供給
部品は原則としてトロリーコンベアを使って、指令室から指示された順序 通りに供給される。 ただし、大きなのものや重い物 は直接ラインサイドから供給している。
ニ 計画の完了
一日の最終組立NOは毎日指令室から指示されるが、この計画が完了したら勤 務時間内であってもラインを止める。又完了しない時は完了するまで作業を 継続する
ユニットの引取りと補充
組立ライン引取りユニット組付けライン
































←フレーム←

空き台車が無い
ラインを止めて、
空き台車が来るまで待つ。





←アクスル←





←エンジン←





←プロペラ←

空き台車が多い
管理者は挽回方策を講ずること

この関係は前工程とその前工程との間も同じである。

5、ラインのコントロール
指司室は生産の指示の他、組立及び組付ラインの可動状況を常に監視し、 ラインストップが発生した場合は即時に要因を把握すると同時に、関係部署へ連絡を取り、対策をさせる。
不具合が発生したら必ずラインを止め、指令室の指示を仰いで生産を再開する。
という原則に従って各ラインは生産をしているので、ラインストップを監視していれば不具合状況を把握できる。

a ライン可動状況の把握
イ ライン停止の把握
各ラインの電源と接続させ、ラインが止められると指令室のグラフィック 板に赤ランプが点灯しチャイムが鳴って知らせるようになっている
特に最終工程である組立工場では、9工程に分けられて停止させた部署が 分かるようにしてある。

ロ 停止回数、停止時間、運転時間の把握
時計と停止スイッチを接続させて、指令室のグラフィック板に停止回数、 停止時間、運転時間の積算が分かるようになっている

ハ ラインアップ NOの把握
総組立ラインにラインアップする時、電光板によるグラフィック板上に ラインアップNOが点灯するようになっている

グラフィック盤
----------○
----------○
----------○
----------○
----------○
----------○
----------○
----------○
----------○
----------○
74
90
第2ライン
@=A=B=C=D=E=F=G=H
62
78
第1ライン
@=A=B=C=D=E=F=G=H
ライン停止
回数
停止
時間
運転
時間
ミッション0612258
Rエンジン0000370
Fエンジン0101369
プロペラ0205365
大型アクスル0515355
小型アクスル0311359
大型フレーム0613357
小型フレーム0408362
RUフレーム0000370
RSフレーム0102368
FJフレーム0000370
キャブ儀装0104366
組立第10410360
組立第20107363


b 異常の把握と連絡
ラインストップがあると、インターホンで異常の状況が指令室に即時連絡が ある
指令室は要因の内容に関係する前工程(及び管理部署へ)に、次の3段替に 分けて連絡する

イ 即時連絡
インターホンを利用して発生の都度、関係するラインに連絡し応急処置を 手直しを責任部署にさせる

ロ 1時間分をまとめて連絡
関係部署の管理者(製造部長)に対して再発防止の対策をするために、 1時間に1度、不具合の状況を放送し、受信側は不在の時にでも分かるよう にテープ・レコーダーにへ録音するようにしてある

ハ 1日分をまとめて連絡
ライン状況表に1日分の異常をまとめて翌朝関係部署に配布し、対策を させる

ライン状況表(3月8日)

ラインストップ車種品番責任遅れ品質誤品欠品段取内容
8:41FJ40アクスル機械




アブソーバーブラケット割りピン穴なし
11:00~11:06DA110シャックルピン組立6



シャックルピン取り付け間違い
5:00DA115エンジン外注




アクセルワイヤ取り付けビスなし










































情報体系図

C.不具合車両の処置
不具合車両は、組立工場の最終調整場の前にもうけられた責任部署別の 不具合車両置場に並べ組立工場外には出さない
但し、不具合車両置場が満杯になったらラインを止める

イ 手直し
不具合車両の手直しは指令室からの連絡により、責任部署が即刻組立工場 へ出向いて行う

ロ 再発防止
不具合車両の手直しにより、不具合の要因が分かるので即時再発防止の 対策をはかる。

d その他の異常処理

イ 設備故障により部品の供給が不可能になった場合、設備・機械 の故障に より、部品の供給が不可能な事態が発生した場合、関係する車種の生産を 中止する。
この場合指令室は問題発生のラインのみではなく全ラインを中止させる
(挽回の方法は変更計画の項目参照−12ページ頁)

ロ 外注部品が一時的に欠品するような場合

i)インターライターで指示がされる以前にわかった場合、組付、 組立ライン共に生産を保留する

ii) インターライターで指示された後にわかった場合、不具合車両の 処理と同様、欠品でラインオフさせ、不具合車両の置場に並べる。
但し、不具合車両置場が満杯になったらラインを止める

以降工事中

<事例2>総組立ての部品引取り
1a、フレーム
1b、アクスル・プロペラ
1c、エンジン・ミッション
1d、キャブ・デッキ
1e、タイヤ
2、購入部品供給

<事例3>ユニットの組付
1、ユニット組付け
2、車体メーカーへの支給
3、元町工場への支給
4、支給ユニットの材不補充

<事例4>機械工場
紛失

<事例5>車体工場
1、プレス品のかんばん
2、信号かんばん
3、材料かんばん
4、仕掛けかんばん
5、臨時かんばん

<事例6>鍛造工場
1、部品の動き
2、かんばんの動き
3、鍛造工場
4、調質工場
5、収容数の決め方
6、ロット数の決め方
7、先行生産
8、新設・廃止

<事例7>鋳造工場
1、生産品目
2、かんばんの種類
3、ものの動き
4、かんばんの動き
5、かんばん枚数調整
6、新設・廃止

<事例8>購入部品
1、購入部品のかんばん方式
2、かんばん納入実施手順
3、運用方法
4、100%納入方式

復刻版が発刊されています。